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特別な友人

わたしには、池田に引っ越してきてから知り合った特別な友人がいます。


その友人は、車椅子で生活をし、知的障がいもあります。

彼女と出会ったとき、共に時間を過ごすときは、
トイレはこんなふうに、
着替えはこんなふうに、
食事はこんなふうに、
昼間はこんなふうに過ごすように、


と細かく接し方を説明されました。

わたしは学生時代、比較的重度な方のための近所の老人ホームでボランティアをした経験はありましたが、

特性はもちろん一人ひとり違うものだし、何しろ失敗したら生命の危機につながるかもしれないという緊張感があったので、その助言は助かりました。

説明をノートにメモし彼女の「取り扱い説明書」のようなものになりました。


はじめのうちは教えられた通りにキッチリこなすことに気を配りました。

それでも、手順を間違ったり、忘れたりすることに遭遇すると、こともあろうにそのことをわたしに教えてくれるのは、彼女でした。

言葉を発することはできませんでしたが、声を発したり、身振り手振りでわたしに伝えてくれました。

わたしのドジを、まるで「あかんや~ん!」とでも言ってるかのように笑ながらポンポンわたしの身体を叩いたり、

彼女が失敗した!と感じたときは、
自分で頭をコツと叩くフリをするのです。

わたしが困っていたり、忘れ物をするとそばでよく見ていて助けてくれたり、教えてくれたりするのです。

言葉を話さないので、彼女の言いたいこと100%理解は出来なかったかもしれませんが、お互いの意思の疎通が可能でした。


こちらが提案したことが気にいらないなど、感情を表現することもできました。

それまでなら、彼女がイヤがっても、
決められた通りのルールに従わせることが正しいことのようにしてこられた経緯があったようでした。

彼女が自分の意思を示すと、「わがまま」だと受け取られることがたびたびあったようなのです


彼女の特性から、興味の対象が小さく限定的になりがちだったり、好きな食べ物を何日も続けて食べたがる嗜好の偏りは確かにありましたが、
わたしにはそんなに気になるほどではありませんでした。

一日の食事のうち一回くらい、自分の好きなものを自分の意思で決め、満たされるようなことがあってもいいんじゃない?

OLだったら、ランチにはお財布持って、今日はどこそこでランチ、今日はお弁当、コンビニなどその日の気分次第で仲間と共に楽しそうにどこだって歩いていくものです。


わたしだって、好きなものを飽きるくらい食べて満たされたい~と思います。

彼女と過ごすうち、思い通りにいかなくて「わがまま」を言ってるんじゃないな、と思うようになりました。
彼女の想いを汲み取ることなく、「正しいこと」を押し付けられることに対しての怒りだったり、不満の表れのようでした。
彼女の気持ちに添ってきちんと整理し、こちらも譲れる場合はその姿勢を誠意持って接すれば、困ったちゃんにはならなかったはずです。


彼女と接するうち、はじめに教えられた「してあげないといけないこと」が、「彼女自身にもできること」があることにきづきました。


危なくないようそばで見守り、させてみると、時間は思いきりかかりますが自分でできたのです!

回数を重ねると、どこに手をおき、どのタイミングでするのかを学習し、要する時間が短くなっていきました。


彼女は「できない」のではなく、「一人でやってみる機会を与えられなかった」ため、できないことがたくさんあることがわかったのです。


一人で自分のことができるようになると、表情が変わります。目が真剣です。
わたしが手伝おうとすると、手を振り払います。
必死になってやり遂げようとしているとき、「生きている」と実感します。


彼女は、足が不自由なことが大いに関係するのでしょうが、体験不足でした。

お散歩に連れ出したときは、
花や木々などの植物や虫といったものは、まるで見えていないかのように映りました。全く興味を持って見ることはありませんでした。

そのかわりに彼女は「風」を感じているようでした。

風が頬や手に当たるのを心地よく感じるようで、戸外にでると気持ち良さそうな表情を浮かべたり、腕を伸ばしてみせたりしましました。


夏の暑い日、わたしが外から汗をかいて部屋に入ると、冷たいお茶とコップを持ってきて入れてくれ「どうぞ、お飲み」としてくれました。

わたしのボケを突っ込んでくれ、笑いあいました。

彼女の好きなお菓子を分けてくれたりもしました。

わたしの喜びを共に喜んでくれました。


彼女に悲しいことがあったとき、わたしのエプロンで涙を拭くこともありました。


彼女が自分でするのが難しいところを少しお手伝いするだけで、
それ以外のことは、何らわたしと変わりはしないのです。

しかし、私たちの間には大きな壁が存在します。
事情があって彼女と会えなくなってしまいました。

絶対に会えない友人がいるなんて
考えたこともありません。

1ヶ月以上経ちました。


彼女が幸せで、人間らしい生活を送ることができるよう願うばかりです。


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プロフィール

ジェリー

Author:ジェリー
自身の子育て中、夫の赴任先の熊本県で【あそびのアトリエリボンクラブ】に出会う。赤ちゃんの発達やあそびの重要性と赤ちゃんとモノ・ヒトの関わりに興味を持つ。【あそびの心理研究所】所属。あそびのアトリエ開設講座を受講。赤ちゃん学会会員。
2013年大阪池田ルームを開設。2019年大阪枚方市に場所を移し、ひらかたルームに名称変更。22歳・19歳・13歳の子どもの母。

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